そのまま黙ってしまった炯斗を見て、恵はますます首を傾げた。
言乃がそっと歩み出て、携帯をかざす。
【ケイトくん、よく気がつきましたね。普通に乗ってたらわかりませんよ】
「……克己さんの時とおんなじだよ。光が見えるんだ…この、目には」
「克己さんが、遺したってこと?」
「わかんね。とりあえず、克己さんが行動していたところには光の筋が残ってる。遺したって言うよりは、足跡とかにおいとか、そんなもんと似たような感じがする」
「へぇ…」
恵はとうに過ぎてしまったヒモの方をもう一度振り返った。
「すごい能力だね…」
「さぁ、役に立つかはわかんねって。そもそも、何でこんなのが出来るようになったのかもわかんねーんだから」
【私には、少しわかるような気がしますよ】
「え?」
【ケイトくんは、私の声が聞こえたり、幽霊が見えたりと、力があります。その力が私の『言ノ葉』のように、固有の能力として発現したんだと思います】
「固有の…」
言乃はさらに携帯に打ち込む。その間、しっとりと沈黙が落ちる。
【コレは私の考えでしかありませんが、その能力とは自らの“名前”に由来するんだと思います。
私で言えば、言乃の『言』、そして読みとしての『ことの』。
どちらも言葉に関係するものです】