「!!」


少し前の光景を思いだし、蒼白になる。
それを知ってか知らずか高橋は顔を背けて続けた。


「被害者は少なくとも10m超の高さから落下したらしい。だけど……それじゃあ辻褄が合わない」

「どういうことですか?」

恵が聞くと高橋は体を正面に戻す。

「あの谷はね、向こう岸までは5〜6m近くあるものの深さは7か8mくらいしかない。
もちろんそれだけでも人が落ちたら危ないんだけど…崖から落としたとすれば崖を転がったはずだから身体中に傷があるんだが、それもない」

「……?」

高橋は大きくため息をつき、頭をガシガシかいた。
そして手帳を睨み少しやけくそに言葉を繋げた。

「つまりはね、鹿沢は空から直接谷に落ちてきたってことになるんだよ」

「空……から」

三人は顔を見合わせた。
『空』――心当たりのある言葉だ。