その時、恵がポツリと呟いた。

「…おじいちゃんは何もしてない…」

「それをこれから調べるんだよ、えーと…舘見恵さん」

高橋はメモをチラリと見て言う。
彼は記憶力が悪いのか?
言乃は首を傾げて彼に携帯を向ける。

【そのメモは一体?だいぶ使い込まれているようですが】

「ああ、これかい?僕、とりあえず何でも書き込むようにしてるんだ。情報の付けたしもあるから、どんどん汚くなっちゃって」

アハハと高橋は笑った。
そんな高橋に炯斗は不審そうな目を向けた。


「それより、現場の責任者がこんなところで油売ってていいのかよ?」

「鑑識の捜査が終わるまで現場には入れないんだ。それまでは情報収集が仕事さ」

「チェ、ともちーに怒られればいいのに」

「…それは勘弁してよ…」

高橋から本気で血の気がいなくなった。
どうやら朋恵はかなり恐ろしいようだ。

「とにかく!わかっている事が少ない以上、事件はどうにでも転ぶよ」