さっさと片付けてスタスタと歩いていく。
炯斗も慌てて食器を返し追いかけようとした。


「ちょ、ことのん! どうし――」

「やぁ! 初めての果飲島はどうだい?みかんは食べられたかい?」

「――っと、羽田さん」


愛想よく話しかけてきた羽田をむげにすることも出来ず、横目で言乃を追う。
言乃は螺旋階段を登り、部屋のある右側の通路の先に消えた。

羽田は元来話好きらしく、なかなか会話が途切れない。


羽田につかまる炯斗の横で恵は、二人の後ろを通り過ぎて部屋に消えていく人々をぼんやりと見つめていた。

通り過ぎる二人組の女性のうち、鋭い目の一人だけが炯斗を一瞥したが、やはり何もせず過ぎて行った。