空耳此方-ソラミミコナタ-


祖父を見る恵の目は厳しく、かかあ天下再来、と炯斗はひそかに思った。

「もう!勝手に出てきちゃってどうしたの?みんな心配してるんだよ?
何も言わずに一式持って出てって、うちではポルターガイストがでて大変だったんだから!」

あまりの剣幕にたじろぐ透だが、耳慣れない横文字に首をかしげる。
が、そんなことを聞く間も与えずに恵は文句を次々に浴びせかけた。

ひとしきり終わってから、一つ息をついて透を睨む。


「で、何でいきなりこんなところにきたの?」

透はぎょっとして目を見開いた。

「すまないが、それは私が聞きたいんだがな、恵?」

恵は目をそらして、ため息をついた。

「おばあちゃんに言われて来たの。……早くしないと大変なことになるって」

「!!」

透はあからさまに顔色を変えた。
汗をかき、目は泳ぎ───明らかに狼狽している。



顔の汗を拭って、険しい顔で恵を、そして二人を順に見回した。

「……それは、どういう意味でだ?」