「そんなことがあったのも……懐かしいな…」 宿を感慨深げに苦笑しながら見詰めた。 羽田は立ち止まったまま、しばらくそのままでいた。 「そろそろ入らね?」 「炯斗くん、言っちゃダメ!」 痺れを切らした炯斗の呟きを恵が叩いて突っ込む。 羽田は苦笑して、入り口に入った。 表情をさっとホテルマンのそれへ変えた。 「ようこそ、果飲島へ!ようこそ、唯一の宿屋、花守荘(はなもりそう)へ!」