「伊緒、こちらへ。その書類もだ」
有無を言わさないその声にハッとして自分を立て直す。
「か、かしこまりました」
あぁもう…っ。
何してるのよ、今は仕事中だっていうのに。
雑念を払うようにカツカツとヒールの音を盛大に掻き鳴らし、大きなデスクの前に立った。
かちり、
切れ長の瞳と視線が合う。
「……こちらです、社長」
スッと手にした書類を差し出そうとすると。
「………伊緒」
甘く低い声で名前を呼ばれ、ぐいっと腕を引かれた。
「!?しゃ……ッ!」
バランスを崩した私の体は温かくたくましい腕に包まれ、
「っんん…!」
抗議しようとした私の唇は熱い創司さんの唇に塞がれた。
いきなりの出来事に目を閉じることも忘れ、与えられるキスに呆然としていると。

