頬杖をつきながらこちらを見つめる漆黒の瞳に、とくん…と心臓が甘く疼いた。
形の良い唇が緩く持ち上がり、媚薬のような声が落とされる。
「何を考えていた?伊緒」
“あなたのことです”
なんて、言える訳もない。
「いえ、何も」
必死に平常心を保ち、冷静な秘書としての表情を張り付ける。
今にも心臓が爆発してしまいそう…
「嘘だな」
「……ッ」
ピキーンと背筋が固まる。
ニコリと微笑んで、
「この俺に隠し事なんて、伊緒ができる訳ないだろう」
私の仮面は一瞬で剥ぎ取られた。
「ぇっ、あ、その……」
ううぅ……
あんなだらし無い顔を見られていた上に、精一杯の強がりもあっけなく打ち砕かれるなんて……
追い詰められ、おろおろと慌て出す私を見て創司さんは笑みを深めた。

