「優等生で落ち着いてて、生徒からも先生からも人気がある、あの冴月さんが…ねぇ?」


ガシャンとフェンスが音を立てた。
私の体がフェンスにぶつかったのだ。
もう後ずさる事は出来ない。



目の前には真っ黒い笑顔を浮かべた宮野。
逃げ場のない私を見て、さらに笑みが増したように見える。



「…何よ」


観念した私は少しいらついた声を出した。


それを聞いた宮野はきょとんとした顔をしたが、それはすぐに元に戻り、また黒い笑みを浮かべた。



「ばらされたくないよね?」


細めていた目を開き、ニヤリと口角を持ち上げる。
本当に黒い翼が似合いそうな男だ。


「…脅してるの?」

「まさか。取引をしようって言っているんだ」

「取引…?」



そしてまた、宮野は笑った。


「そう、取引だよ」




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