「もぅ帰りな。」


ハッ!!


私は突然理性を戻した。

アラタの手はもう頬の所にはなく、またヘルメットを被ろうとしている。


「ぅ、うん。」

私が恥ずかしくなりうつむいていると、アラタがエンジンをふかせた。


そして、下に落ちていた私の手をすくい上げ
「また、会える。」


と手の甲にキスを落とすような仕草をし
「おやすみ。」


と、爆音と共に走り去って行った。



私はアラタが走り去ったあとも少しの間放心状態だったが、『家に戻る』という指令を思い出し、走った。


『また、会える。』

その言葉が私の中でループする。


私の心は弾んでいる。

外の寒さもたいして気にならない。



右頬も、もう痛まない。