彼はまた缶コーヒーをすすりながら
「そりゃぁいくらバイトが終わったからって、本屋の敷地でうずくまってる奴がいたら声かけるでしょ。」
私は申し訳ない気持ちを目一杯込めて「すみません。」と頭を下げる。
するとくぐもった笑い声が聞こえ
「冗談だよ。ちひろだってすぐわかったから声かけた。」
私は顔を上げ、まだ笑顔の余韻が残る彼を見つめながら、会いたくないと意図的に彼を避けていた事が本当に申し訳なくなった。
だから彼の優しさでまた泣きそうな、今の自分ができる精一杯の笑顔で「ありがとうございます。」と笑ってみせる。
彼は驚いた顔のあと、フイッと顔を背けポンポンと私の頭を撫でてくれた。
私はそれが本当に嬉しくて、不覚にもキュンとしてしまった。
