すると彼はぐっと私の方へと、机に乗り出すような姿勢になった。
そして、
「名前は?」
いきなりの彼からの質問。
自分の思想を読み取られてしまったのではないかと要らぬ焦りをした後、別段おかしな質問ではない事に気付き、会話をする気になった。
「・・・・ちひろ・・です。」
チャンス到来だ。
「あの・・お兄さんは?」
彼は私の質問を予想していたのだろう。
「カゼカミ アラタ。18歳の高校3年生。1週間前からあそこの本屋でアルバイトしてる。趣味は読書。」
なんだかいきなり彼との距離がぐっと縮まったような気がする。
とりあえず《客と店員》から《知り合い》にはなったかな。
私は名前しか言ってないけど・・