「ここって新しく建てたうちの大学のセミナーハウスでないの…?」 カズが口をあけたまま見上げた。 「でも新しくてデカくて 目の前は海だし最高じゃない オマケにただよ」 「さすがマネージャーしっかりしてるわ」とトシも相変わらずクールに建て物を見上げた。 「さっ少し休憩したら機材運んでセッティングして2時間後には練習開始するからね いいわね 以上解散!」「厳しいなあ〜あーあ」とダラダラとざわつきながらナオの号令に肩を落とし機材を運ぶのであった。 メンバーが休憩しているうちにヒロは全てのセッティングを終え 一服していた。「ちゃんと働いてねヒロ あんたはバイトなんよ」ナオが休憩を終えスタジオのドアを開いた。…愕然とした 全てが完璧であった まるでプロ仕様 「レコーディングも今から出来ますよ」「俺 昔こんな仕事を少ししてたんです」と当たり前の様にヒロが言った。 「ああっそうなんだ ちょっとトイレ行ってくる」ナオは愕然のまま 目を覚まそうと驚きをかくしきれない様子でトイレに向かった。「あっお姉ちゃん どしたの?」カオリが姉のキョトン顔を見ながら言った。「そう言えば さっきヒロが1人で機材運んでセッティングしてた しかもヒロってドラム ギター ベースって全部弾いて音のバランスまで さらにもの凄く上手なのね プロ見たいでビックリしたよ お姉ちゃんバイト代いくらで来てもらったの? 部費足りる?」 …「三食昼寝付き時給650円」 「えーバーゲンセール過ぎない?でも素敵だったなあ カオリやっぱり…」と顔をほんのり赤らめながらトイレから出て行った。集合時間を過ぎているにもかかわらず トイレの鏡の前で自分の顔を眺めながら ただ立ち尽くしているナオ。         何が 何故 何があった 何なんだろう この不思議な感情は?…