それなのに碧が優しく私の名前を呼ぶもんだから、私はまたその目に吸い込まれた。


「自分の気持ちに嘘つくな。唯子が選ぶんだ、唯子の幸せだけ考えて選べばいい。」

「私の…幸せ?」

「二人は唯子が幸せじゃないと幸せにはなれない…。唯子が幸せになれる道を選ぶのが二人にとって一番なんだ。」


碧は泣き出してしまいそうな私の頭に手を乗せて、何度かポンポンと叩いて笑った。

私が碧をじっと見つめると、碧の左の口角が上がって何故だが少し安心した。


「いいか?お前の幸せだけを考えて選ぶんだ!」

碧の言葉に唯子は目を伏せ頷いた。




―その日の帰り


「…」


誰も傷つけたくないなんて私のエゴだ‥‥


だから明日はちゃんと自分の幸せを選択するよ。

…ぅん。やっぱり…私が好きなのは…





卒業式当日


「終わったなぁ…」


式も終わって名残惜しむように話し込んでいる卒業生を眺めながら碧が言った。


「そうだね…」

「…決まってんだろ?」

そう言った碧に笑顔で答えた唯子


「うん。幸せの選択するよ!!」

「よし、行ってきなっ!!」


碧が私の背中をポンと叩いて優しく笑った。