初昼の儀式

 
 背丈は162の私より10ほど高いくらいだろうか。体重は42の私より9程重いくらいだろうか。BMIがそう変わらないと思しきがりがり2人組みは、雨が好きで傘が嫌いなおかげで、初対面でも打ち解けた。

 優男は葉月涼と名乗った。年齢は私より3つ上の25で、ドイツ文学専攻の修士課程にいるらしい。
 「な、なんか清清しい名前ですよね。」
 「よく言われるんです。名前負けしてる。」
 「あ、いやいや、そういう意味では。」

 一応否定はしてみたものの、確かにこの名前では学生生活、苦労も多かったかもしれん。
 肌は白いしスラリとした体型なので、爽やか、といっても良いんじゃないか、と一瞬思うくらいには爽やかなのだけど、いつの時代だと問いたくなるような牛乳瓶の底のような眼鏡と、痩せすぎ故にレディースと思しきジーパンとラグラン、似合っているとも思えない長めの髪のせいで、名前負け、は否定できなかった。
 私は「戸波麻子」と名乗った。