本当に残念そうな顔をして医師は言った。そして「でも、普通の幸せな結婚生活を送る分には、問題ないからね」と付け加えた。意訳すれば「セックス可能」だという事は解せたけれど、度重なる検査やそのために情けない体勢ばかりを強いられるこの状況を毎日憾む事にも疲れ果てた私には、幸せな結婚生活という言葉の先を見る気力がなく、ただひたすらに早く病院から逃げ出したかった。
 その日は消灯時間が過ぎると、顔が腐るほど泣いた。体の中身が消耗し切ってこのまま腐って死んでしまうんじゃないかと思うほど、泣いた。