2人は、私がそこにいる事を忘れているんじゃないかと思うほど哲学や語学の話を熱心にやり合い、或いは、そういう自分達を見せたかったのかもしれん、とりあえず初めて共に呑む人間には、自分たちの興味の対象、そしてそこに没頭する様を見せることで、己の趣味趣向というアイデンティティを見せたがるものなのかもしれず、ただ私は内容が意味不明な事甚だしいので、適当に相槌を打ち適当に微笑を浮かべてやり過ごす。りょうがふと、いつもの分厚い眼鏡を外すと、切れ長の輪郭をした目に眼光鋭い瞳がそこにあって、しばしどっきとする。しかしすぐにりょうは優しい笑顔を私に向け、ど近眼なんだ、と言ってまた分厚い眼鏡をかける。りょうの目が再び点画の一点のように小さくなった。時折、その目で周りを忙しなくぎょろつかせているのは、どうやらりょうの癖、らしい。しかしその酒豪ぷりには驚かされ、ハイネケン、ギネス、ウォッカ、はじめと終わりは生で〆て、それで酔いが全く見えない。ざるだった。