学校に続く長い階段を降りると、レオン君がふいに足を止めた。
 「なぁ。」
 「…どうしたんですか?」

 「お前等庶民はこの長い階段をいつも上っているのか?」

……。
 「庶民、ですか。そうですよ、いつもこの階段を上っています。」
桃がそう答えると、レオン君はむっと顔をした。
 「…そうか。」
そう答えると、スタスタとまた歩き始める。
…やっぱり、お金持ちってなんかあんのだろうか。

 「あ、今日‘スクボ‘の発売日なんです!本屋、寄っていきません?」
桃がそう言うと、レオン君は「スクボ?」と桃に尋ねる。
 「‘スクボ‘って言うのは、‘スクールボーイズ‘の略です。学生向け男性雑誌で、いろんな学生の悩みに答えてくれたり、特集が面白い雑誌なんですよ。」
 「……フーン。……俺も買う。」
レオン君はそう言うと、本屋に向かって歩き出す。
 「…レオン先輩って面白いですね?」
桃の一言がごもっともだと思った。

___ウィィーン…
 「……!?」
まず自動ドアにビビるレオン君。
金持ちは本屋になんか来ないのだろう。きょろきょろとあたりを見渡していた。
スクボが手に入り、レジに向かう。
 「768円でーす…」
小銭がないのか、万札を出した。
 「せ、千円は…。」
 「ない。コレで頼む。」
 「あ、い、一万円頂戴しまーす……」
店員のやりにくい表情といったらありゃしなかった。
お釣りを貰ったのはいいものの、いつも財布なんか持ち歩いてないのか、
鞄に入れる始末。
…理が居たら、きっと何か言っているだろうな。