『浩也の声を聞いちゃったら、言えないと思ったの。だからわざとこんな時間に電話したんだ』
ごめんね、ずるいよね。
「…ッほんと」
ずりぃよ、お前は…
『さっきまでは平気、だったんだけど…おかしいなぁ』
「小夏…っ」
ぐっと唇を噛み締め、拳を強く握りこんだ。
『あはは…もう、ダメみたい……』
弱々しくなっていく、声。
その向こう側で、お袋さんの泣き叫ぶ声が聞こえた。
『ひろや……』
「ん…?」
涙が、止まらない。
『ありがとう…』
「ッ……」
もういい。
もう、いいから。
「こな、つ……っ!」
俺にも言わせろよ。

