『約束、守れないや』


「……そうか」


『あんなこと、浩也の口からもう聞けないのに』



電話の向こうで、小夏が小さく咳き込んだ。



『ッケホ…もう一度、聞きたかったのになぁ…』



自嘲気味に小夏が笑う。



「なぁ…」


『浩也』


「小夏」


『ごめんね』


「すまねぇ…」


『好き、だよ』


「“守る”って言ったのに」



ぽたり


雫が落ちる。



『好き、大好き。浩也が大好きよ』



ぽたり ぽたり


足元の床が濡れていく。



『ほんとはちゃんと話そうと思ってたんだけどね』



喉がひくつく。