プツ、――――
『…えっと、小夏(コナツ)です』
柔らかな声が冷たく冷えきった機械から流れてくる。
『あ、そんなの言わなくても分かるよね。留守電なんて初めてだから…』
ゆっくりと瞳を閉じ深く息を吐き出した。
肺に残っていた僅かな煙が空気に溶け込む。
『ふふ、何か変だよね。返事ないのに、ずっと喋ってるなんて』
電話の向こうの空気が和らぐ。
『いつもだったら“うん”とか“ああ”って返ってくるのにね。すっごい無愛想だけど』
「うるせぇよ…」
ぽつり
そう返すと、ますます相手の笑い声が深くなった。
『今“うるさい”って思ったでしょ』
ついでに眉間に皺寄せて。
思わず指で額に触れてしまい、目当てのものをなぞると苦笑した。

