肝心の証拠資料を忘れてしまったのだ。

 朝持って来たのに、俺のデスクに置いたまま退社しちゃって腹が立つ事。

「ハァ? なーに、それ?」

 呆れ顔の小出さん。

「忘れて来ちゃったんだよ、持って来るの」

「って言うか、最初から無いんじゃないの?」

「有るんだよ」

「嘘ばっかり、無いんでしょう?」

「有るんだよ!」

「正直に言いなさいよ」

「有るッ! そんな資料が無きゃ、お前の事を悪く見ねーだろ!」

 ついつい意地を張る俺。

 小出さんはため息を付き、冷たい目で俺を見つめた。

「ハッキリ言えば?」

「え?」

「私と逃げたくないってハッキリ言えばイイのに」

「待てよ。そう簡単に結論付ける…」

 小出さんは俺の言葉を遮るように…

「無いんでしょう?」