振り返ると、江崎先輩は辺りをキョロキョロしながら俺に指で手招きをした。

「はい?」

 受付カウンターに戻った俺。

 江崎先輩は辺りに誰もいないのを確認すると身を乗り出して来た。

 小声で俺に話しかけて来る。

「どうしたの藤瀬? 何だか元気ないじゃない?」

 俺は江崎先輩に少し顔を近づけて答えた。

「バレたんですよ」

「バレたって? 何が?」

「俺が小出さんと付き合っている事がね、板倉美咲にバレちゃってるんです」

 江崎先輩と小出さんの視線が共に俺に集中した。

「藤瀬さん…」

 心配そうな表情で俺を見る小出さん。

 江崎先輩はしばし考えて俺に言った。

「藤瀬は今夜、どこにも行かないよね?」

「はい」

「私が今夜、藤瀬の方に電話をかけるからね」