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「久しいな、ハイベルト」


記憶の中に浸っていた俺は突然聞こえた声に一瞬で現実へと戻ってきた。


「やつれたか」

「…貴様…は…………」


漆黒の髪に瞳…………
憎んできりがない……


「ラドナ…国王………」

「覚えていたか、ハイベルト。どうだ、もう一度戻ってくる気はないか?」


今すぐにでも殺してやりたい…
俺からアイツを奪っておいて戻ってこい…だと…?


「冗談じゃねぇ…忘れたわけじゃねぇだろ…」


俺は手甲掻きを構える。


「お前を生かしておいて良かった、ハイベルト。やっと鬼を生み出せた」

「な…んだと……?」


生かしておいて…だと…?



「お前を俺の力で外へ逃がしたのだ。俺の力は大地と大地を繋げる力だからな」


ラドナ国王の後ろから現れたシドはあの時と同じ、冷たい瞳を俺へと向けた。


俺はあの時、沼に飲み込まれ死を覚悟した。


でも死ななかった。


目を覚ますと、俺は生きていて、見たこともないような大陸で倒れていたな。


それがラージシア大陸だ。


「お前に抗う事の出来ない絶望を与え、修羅とする為に生かしたのだよ、ハイベルト」


ラドナ国王はニタリと笑う。


俺をわざわざ生かし、また駒にする為に…か……?


「私に忠誠を誓い、剣を捧げよ、ハイベルト」


コイツは………
俺が従うと思っている。


やっぱりイカレてやがる…