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―アデルシア帝国、王の間


「シド・ラッサ、只今帰還いたしました」


シドはゆっくりと片膝を床へとつけ、頭を下げる。


「仕事が速いな、シド」

「ありがたきお言葉」


シドの前に立つのは、アデルシア帝国国王、ラドナ・スペルディ・トランサ。


上位継承権を持つ兄二人を抑え、わずか16で即位し、このアデルシアを完全なる武力国家へと作り上げた実力者だ。


「シド、娘の様子はどうだ?」

「今は眠っています。おそらく、力の拒絶反応が原因で体が弱っていますね。それからダンテ・ハイベルトですが、地下牢に収容しています」


シドが事務的に伝えると、ラドナ国王は笑い声を零す。


「…国王……?」


笑みを浮かべる国王に、シドは首を傾げる。


「お前は…本当に冷たい人間だな。ダンテはかつての弟子だろう?」


「…それは昔の話です。今の私とハイベルトには、何の繋がりもありません」


「…昔の事だ」とシドは呟く。


「フッ…お前のその冷酷な瞳が私は好きだ。絶対に裏切らない忠誠の証だからな」

「…もちろんです。私があなたを裏切る事などありえません」


シドの言葉に、ラドナ国王はまた笑みを零す。


「さて…娘への挨拶のついでだ、あれの顔も拝みにいくか」


ラドナ国王はゆっくりと立ち上がる。


「お供いたします」


シドの言葉にラドナ国王は無言で頷く。


―キィィ…


そうして、ラドナ国王とシドは王の間から姿を消したのだった。