「…ここだ」
大きな扉の前で女性は足を止めた。
「…おかしいのう」
それから首を傾げる。
「何がだ?」
ダンテの言葉に女性は眉間にシワを寄せる。
「ここまで来るのに誰にも会わなかった」
その言葉に俺達はハッとする。
そうだ、おかしい…
ここは地下まで一本道だ。なのに誰にも会わないなんて……
「罠…?」
俺の言葉にカースは頷く。
「罠としか思えないね」
「…でも…今更だ。今はその罠とやらに乗るしかない」
フィリアを助けたい…
あと少しなんだ。
あと少しで………
「何かあったらわらわは人質とでも言えばよい。この地では少し有名でのう、役には立つであろう」
女性は笑みを浮かべた。


