―コツ、コツ…


階段を降りる足音だけが響く。


ひたすら続いていた沈黙を破ったのはアイリスだった。


「巫女様は…あなたと似ているわ…」

「え…?」


ぽつりと呟いたアイリスに私は驚いていた。


「昔から、よく解らない人だったわ。私があの方のお付きになったのは10の時よ。私より年上のあの方は私を妹のように可愛がってくれた…」


懐かしむように呟いたアイリス。


アイリスが前を歩いているせいで顔は見えないけれど、彼女が微笑んでいるような…そんな気がした。


「このアストラルに目覚めたのは3つになる頃だったかしら。心を読み、支配するこの力を両親は気味がるがって寒い冬の雨の中…私を捨てた」

「!!」


捨て…られた……


私はこの力のせいで孤独だった。
でも………


両親には愛されてた……


「人の温もりも、愛も知らずに育った私に、あの方は溢れるほどの愛情をくれたわ…」


私にとって両親が大切な人であったように、アイリスにとってユラさんは大切な人なんですね…


「この方を守る為なら…命をかけられる…。でも、実際、私があの方に出来る事なんてなかった…」


悔しそうに語るアイリスはさっきとはうって変わって泣いているように感じた。


「あの方は…自分の力は見るだけで何も出来ない非力な力だと嘆いておられたわ。救いたい命さえ救えず、それでも大きすぎる代償を払い続け、いつか……」


そこでアイリスは黙り込んだ。


アイリスの肩が小刻みに震えている。


…泣いている……
これは確信だった。