「エイゼ様」


俺は床に片膝をつき、頭を下げる。


「…うん、ユーシス。君はやっぱり……」


エイゼ様が笑った気がした。


「…エイゼ様、俺はエイゼ様にこの剣を捧げました。今でもあの時の忠誠に迷いはありません。でも……」


下げていた頭を上げ、エイゼ様の瞳を真っ直ぐ見つめる。


「俺は…あなたに誓った忠誠よりも、貫きたい想いがある…その事に気づいたんです」


俺は…フィリアを守りたい。


ただ守るだけじゃなくて…心も……


それは中途半端じゃ駄目なんだ。俺は…今の主を捨ててでも……


「…エイゼ様、剣を返還してもらえませんか」


それは事実上の裏切り。
その命尽きるまで共に在ろうと誓った契りを破る事になる。


「罰は受けます。ですが…どうか時間を下さい。必ず戻って来ます、だから!!」

「…いいんだ、ユーシス」


言い募る俺をエイゼ様は優しい笑みで制した。


「…エイゼ様……」


何も言えず黙り込む俺にエイゼ様は困ったように笑う。


「…私は忠誠を誓ってくれたから君を手元においていたのではないよ。私はね…君を本当の弟のように思っている。あの日、ジードに拾われこの城に来たあの日から……」


エイゼ様がいうあの日…


それは俺がジード隊長に拾われて城へと連れて来られた日の事だ。


あの時の記憶と思いを馳せて瞳を閉じた。