半分の心臓

少し申し訳なさそうに彼女は語る。
 
そんなものはいつでもいいに決まっている。
 
ボクは毎日でも彼女に会いたいのだから。
 
もう少し話していたかったのだけど、彼女が可愛そうになり 
それから今度会う約束をし、電話を切った。
 
まるで受話器が恋人であるかのようにゆっくりと手元に置いた。
 
この瞬間の余韻は気持ちがいい。
 
胸はほんのり温かくて、悲しくて、甘くて、苦しくて、嬉しくて、
世界のありとあらゆる程よい幸せを凝縮させたものを胸に秘めていて、
手にある受話器にさえ幸せのおすそ分けをしている。
 
世界で一番の優しい人になれるのではないかと自分でも思う。
 
それからボクは春休み中、
彼女が来るのを楽しみにしていたんだ。
 
でも、そんな天使のささやきも
お互いの都合上、実行されることはなく、
春休み、遊びに行くと言っていた佐智乃は
結局、一度も来なかった。
 
予定が延びて延びて、終に今日やって来る。
 
半分、あきらめていたことが急に叶うことになり、少し半信半疑。
 
少し冷静になって気がついたことがある。
 
「部屋が汚え。」
 
全力で大掃除を開始した。
母さんも最初から言ってくれれば怒らなかったのに。