「あらまぁ…帰って消毒しなきゃ!」

美紗子は、哲夫の怪我を見てゆっくり立ち上がる
優希も、ピョコンとベンチから飛び降りる
暁はまだ文句を言わないお年頃
優希は勿論文句など言わない
「やだ、帰らない!まだ遊ぶ!」などと、子どもの定番的な事を言う所など未来永劫見られないだろう

「さぁ、消毒するわよ~、座って座って~」

救急箱から消毒液とガーゼを取り出し、哲夫に椅子に座るように促す美紗子
哲夫は嫌々ながらも椅子に座る
これから来るであろう痛みを想定しては顔を歪めるのだった
優希はそれを横目で確認して、洗面所へ向かう

「しみるぅぅぅ!!!!」

手を洗っている優希のところへ、情けない哲夫の叫び声が聞こえてきた
子どもじゃないのだから、我慢すれば良いのに…と思いながら優希はリビングに戻る

「ぅ~~~い~た~い~」

意外と怪我の手当てが上手い美紗子によって、綺麗にガーゼが貼られている哲夫
頬と額…鼻の頭の3か所にガーゼやバンドエイドが貼ってある
ソファーに蹲る哲夫を確認し、自分の部屋に戻る
部屋に戻ったところで、何もすることなど無いのだが…