前世と今~記憶の鎖~

翌日の子ども園…そこには、困っている優希の姿があった

(…どうしよう…)

優希は今、危機に直面している
それも、予想だにしなかった危機に…
それは…

(どないしよ…絵描くなんて…)

小さいテーブルの上にある画用紙を前に硬直する
他の子ども達は楽しそうに何かを描いている
一応テーマはお母さんの顔…なので、お母さんなのだろうが…
ちなみに、恭ちゃんは今日も休みだ

(…自分が描いたら…絶対怪しまれる!!!!)

文字も綺麗に書けるようになった優希
家では暇なため、絵も描いている
その絵は3歳児とは思えない絵である
そのため、描けば怪しまれる確率100%
3歳児っぽく…3歳児独特の表現で…というのも難しいもので、真似しようにも急には出来ないのだ

(うわぁ~…ホンマどないしよ~~)

画用紙を目の前に硬直していると、美咲先生が近づいてきた

「優希ちゃん、どうしたの??」

可愛く小首を傾げられて尋ねられても困る
非常に困る
『上手すぎて描けません…』なんて、口が裂けても言えない

「えっと…えっと…」

上手い誤魔化しの言葉が見つからずに『えっと…』しか出てこない
『描きたくない・描けない』という言葉は美咲先生を困らせるだけ
そんな子どもみたいな事は言いたくない
かと言って曖昧に返答すれば、美咲先生は優希が描く意欲が湧くように言葉をかけるだろう
別に描く意欲が無いわけでは無いので、それはそれで困る
八方塞がりで困っていると、少し離れたところでのケンカが目に入る

「あ、ケンカしてる」

優希が指差す先には、ケンカをしている子ども
美咲先生は優希の思惑通り、そちらに向かった