前世と今~記憶の鎖~

「はぁ~~…疲れた~~」

帰宅した優希の第一声は、とても3歳児の発言とは思えないもだった
玄関に座り込み、ノロノロと靴を脱ぐ

「ん~~…これ以上色々言うたら、怪しまれるよなぁ~」
「何の話~~~?」

優希は、頭の上から声がして、上を見る
そこには、ご機嫌な美紗子の顔があった
優希の今、悩んでいる種を作った張本人だ

「『何の話~?』や…ないわ…はぁ~…
てか、何で急に子ども園なんて行かそう思たんや?」

子ども園に行く…という話になった、いきさつを聞いていなかった優希
美紗子がドタバタしていたので、聞くに聞けなかったのだ

「それはねぇ~、恭君も子ども園に行くからよ♪」
「……」

どうやら、原因は幼馴染にあったようだ
優希は、美紗子の言った理由に言葉が出なかった

「でも、今日…恭ちゃん来てへんかったで?」

今日は入園式で、入園する子どもと保護者が大ホールに集まったが、見知った幼馴染の姿は無かった

「恭ちゃんは、熱が出て今日は休みだったのよ~」
「…そうなんや」

子どもというのは、少しの環境の変化で熱を出したりする
優希自身は、精神が安定しきっているので、急に熱を出すことは無い
しかし、やはり風邪にはかかりやすいと感じている
免疫はまだ少ないのだから、仕方がないのだが…

「それより、悩んでたことはどうなったの??」
「…ぁ…それ考えな…」

一瞬忘れていた悩みの種を、目の前にしてガクッと肩を落とす

(どうしよう…両親の時と違って話せばえぇ…ってわけやないからなぁ…)
「優希ちゃんの話…してみたらどうなの?」
「それはアカン…前世の記憶持って生きてるなんて、無駄に多くに人に話さん方がえぇし
それに、そんな話を会って間もない人に話すんは、あまりにリスクが高すぎる
気味悪がられるか、精神疾患あると思われて病院紹介されるかもしれへん
下手したら、珍しがって色んな人に話すかもしれへん
それは、社会を騒がせる事になる…それは避けなアカンねん
今は、自分がどうやって誤魔化し通すか…を考える方がえぇわ」

優希はそう言って、着替えるために自室へ
残された美紗子は、それをただ眺めていた
自分の思慮の上を行く娘
普通の家庭なら、オカシイ事がこの家では当たり前なのだ