HERETICAL KIDS

「うわぁ…蒸されてるなぁ~
まったく、慌てて暴れるからいけないんだよ…」

リュートはもう一度ため息をついた
何故、隣のおじさんが蒸されていたのか…
それは、焦りすぎて暴れまわり着ぐるみの中の温度が上がったためである
もともと、着ぐるみと体がピッタリ密着していたのだ
着ぐるみ内の温度が上がるのは、想像に難しくない

「さて、準備しないとな」

チャックを開けたまま隣のおじさんを放置し、人間界に行く準備を始めた
リュートにできることは、チャックを開ける…以上のことはできない
隣のおじさんが重すぎて…

「と言っても、あんまり荷物無いな…」

少量の衣服と、タオルなどの日用品
それをリュックに詰め込むと、リュートの準備は終わった
あまりに少ない荷物に、リュートはポツリとそう呟いた

(足りないものは向こうで買えばいいし…
忘れ物は取りに戻ればいいし…)

忘れ物が無いかを一応確認し、ふと視線を隣のおじさんの方へ
隣のおじさんは、未だ気を失っている
ピクリとも動かない隣のおじさんが、岩のように見えてきた

「そういえば…コレ、どーしよう…」

コレと表現された隣のおじさん
当の本人は気を失っているので、反応も何もない
いつまでもココにいられても邪魔なのだが
動かすには、あまりに重過ぎる

「(ま、いっか…放置で)多分、この着ぐるみ着せたのは…奥さんだろうなぁ」

隣のおじさんの奥さんは、面白いことが大好きなのだ
この着ぐるみも、その奥さんが隣のおじさんに勧めたのだろう
そして、チャックを閉じたのはその奥さん
だから、どんなに頑張っても隣のおじさんはチャックに手が届かないわけだ

「誰か、コレ取りに来ねぇかなぁ~…来ねぇ~よなぁ~」

ポツリとそう呟いたが、慣れているのか…すぐに放置するという結論に至った

「あ、薬飲まねぇと」

テーブルに置いてある薬の袋をあけ、薬を取り出しサッと飲み込む
その後、すぐに側に置いてあった水を飲む

「ぷはぁ…さてと、まだ頭痛もするし、さっさと寝て本調子にするか」

リュートは服を着替え、迷うことなくベッドに入り眠りについた
隣のおじさんの存在をキレイに忘れて…