天井は低く、背の高い私が手を伸ばせば簡単にカンテラに手が届いた。



フックからそれを外し、わたしは群がる虫を手で払うと部屋の奥にいる少年に光を当てて、人間であるかを確かめた。



そしてさらに驚いたことに、少年は血で汚れていた。



指、顔、頸筋と、服から伸びる素肌には生々しく血痕が付着しており、この状況を作り上げた張本人が彼であることを示している。



こんな子供が、十数人に渡る大人を殺害したというのか。




「君、名前は」



「…………」



少年は片方の瞳だけで私を見据えた。



綺麗な翠眼をしている。



ただ目になにか入ったのか、左の瞳は黒髪と手で抑えていた。




「君がやったのかい」



「お兄さん、警察の人?」



「違うよ」



「そう」




少年は存外落ち着いていた。


余計に私は不安になる。



突発的にこの少年が彼らを殺害し、混乱に陥っているのならまだわからなくもないが、彼の安定した瞳の揺らぎは、明らかに理性が宿っていた。