「てめえ女に手あげてんじゃねえよ。」

あたしの耳元で、低くかすれた声が響いた。

甘い匂いがあたしのまわりにたちこめる。

うわ…何だろこの匂い。
甘い甘い、頭の芯がクラクラするような匂い。

「はあ!?てめえ誰だよ!?」

アキオがイライラしながら言う。
でもあたしを抱きかかえてるヒトは、ちっとも動揺してなくて。
かすかに笑ってるみたいだった。

笑うたびに、あの甘い痺れるような匂いがした。