「直哉、あのね」 「ん?」 「新しい携帯電話の番号、教えてくれる?」 直哉は微笑んで、財布の中から名刺を出し、そこにペンで携帯電話の番号と住所とアパートの名前を書き、私の前に差し出した。 「これがあれば、携帯電話を無くしても、俺を見つけられるだろう」 「ありがとう」 知り合ってから初めて、直哉との間に生じたいろんなもののベールがするりと落ちていったような気がした。