男は観念したのか、ただ床のある一点をじっと見つめていた。 心なしか小刻みに震えているようにも見えた。 「どうする?やっぱり警察だよな」 甲斐君が携帯電話を取り出す。 「待って」 携帯電話を握った甲斐君の右手を優ちゃんが手で押さえながらもう一度「待って」と告げた。 彼女は縛られた男の傍に歩み寄り、しゃがむ。 「名前を……教えて」 驚いたように男は優ちゃんの顔を見る。そしてまた顔を背ける。 「あなたの名前を教えて。思い出すから」