「あっ!夕暮さんっ!!」

「なに!?」

フラッシュがすごくて、目が痛い。

後ろを向くと…

「後ろ向かないで!!」

「彩希~!!どうすればいいのぉ…」

「あたしだって、ここに来るのに時間がかか

ったの…ちょっと、どうしようも…」

「…チッ」

…誰か舌打ちした?

「ったく、川崎は使えねぇな」

「坂下クン!?」

イライラっとした様子の坂下クン。

両手をポケットにいれて、ズカズカと歩いて

いく。


―ガシャンッ


言葉に表せないような、物の倒れる音。

…その物は、机。

シーンと静まる教室。

「お前らさぁ…夕暮のファンなの?野次馬な

の?てかどっちでもいいけどさ…」

はぁとため息をついて言う。

「夕暮に迷惑かけんの、やめてくんない?困

ってんだろ」

すっごく冷静に。

淡々と言葉を発した。

「坂下クン…」

泣けてきた。

ていうか、泣いてる。

「だぁ、もう…泣くなっつの」

「でも…だってぇ…」

「あぁ!もう…」

はぁとまたため息をついて…

ギュッとあたしを抱き締めた。

「えぇ…?」

「…俺のせいじゃねぇから。あいつらがお前

を泣かせるからわりぃんだよ」

「キャー!!」

悲鳴が上がる教室。

逃げた方がいいって思ったけど、力が強くて

動けない状態。

「…てめぇら、写真とか撮ったら、今度はま

じでキレるからな」

ボソッと。

けど、全員に聞こえる声で言った。

「ごめんね、坂下クン…ありがとう」

広がっていく、あたしの声優の噂。

けど、それと共に、大きくなる坂下クンの優

しさがあった。






「バーカ。俺、誰にでもこんなことやるわけ

じゃねぇからな」