「奈央、起きなさい!!」

「う~ん?あっ、お母さん?」

「奈央、あんたもう学校行くんでしょ?!」

「えっ…学校?」

今、何時?

…7時半。

「ヤバイ、間に合わない!!お母さん、学校ま

で送ってって!!お願い!!」

「もう…わかったから、早く着替えてご飯食

べて」

「うん!」

さっきの、夢?

最終審査って、セリフを自分で作るってこと

なの?

どうしよ…

あたし、作れるのかな?




「ねぇ、彩希」

「ん?」

「最終審査がセリフを自分で考えるって、有

り得ると思う?」

「う~ん…わかんない。けど、有り得るんじ

ゃない?だって、今までもおもしろかったも

んね」

「…やっぱり?」

正夢になっちゃうかな?

「なんで、そんなこと思ったの?」

「あのね、今日の夢が最終審査の夢でね。そ

の時に、この審査内容だったの。そんなこと

なんて、有り得るのかなって…」

「正夢なんじゃない?なんか、こういう大切

な時の前にその正夢見るとか、よくあるし。

セリフも決まってたの?」

「…うん」

「なに?」

『俺が試合に勝ったら、俺と…』

「のあとに、あたしが考えたセリフで…」

『…わかった。ありがと』

「ってセリフなんだけど」

「…へぇ。わかった。なら、先になにか考え
ておけばいいじゃない」

「…それはダメだよ。なんか、ズルいよ」

「ズルいって、本当かわからないんだからい

いじゃない」

「…ううん。自分がもしかしたら、こういう

立場になるかもしれないってわかっただけで

充分だから」

「…そっか。奈央がそういうなら、いいと思

うよ」

「うん」

…こんなの強がりにしか過ぎない。

けど、強がりたかった。

…なんか、負けるのが怖くて。






「夕暮奈央さん」

「はい!」

部屋に入ると、あたしとオーディションで残

ってる人が一人と、審査員4人。

「今日の最終審査は、セリフ作りです。ここ

に、言葉を自分で考え、当てはめていただい

て、演技していただきます」

「はい」

「みなさんにお願いするセリフは、これにな

ります」

あぁ…

やっぱり、夢と同じだ。

『俺が試合に勝ったら、俺と…』

『( )』

『…わかった。ありがと』

同じだから…

あたしの最高のセリフを作ろう。

「それでは、10分後にまた、この部屋に集ま

ってください」

…気合い入れて、あたし!!

よし!!




隣の部屋に入ると、あたしの相手の方は、あ

たしのことを睨んできた。

…怖いよぉ。

とにかく、あたしはセリフに集中しないとダ

メだよ!!

頑張るんだ、あたし!!