「…碧、お客さん」

…あたしが、思い悩んだ顔をしていたのか、

お母さんが、控えめにあたしに声をかけてき

た。

「お客さん?」

誰だろう。

翔かな?

でも、翔なら家に上がってくるよね?

「誰?」

あたしは、玄関のドアを開ける。

「……碧」

あぁ、なんで?

なんで、こんなとこに来たの?

あたしが、早く忘れようと、頑張ってたのに

さ。

「…なんで?」

「…碧に会いたかったんだよ。悪いか?」

…悪いよ。

あたしは、忘れようと、頑張ってた。

会いたかった…なんて言われたら、忘れられ

ないじゃんか。

「…何の用ですか?」

「…お前に、言いたいことがあった」

…あぁ、文句言われるのかな?

「なんですか?」

なるべく冷たく。

冷たくしてないと、忘れられない。

龍さんに、腕を引っ張られて、抱き締められ

た。

離れようとするけど、力が強すぎて、離れら

れない。