龍さんについてって、来たのは、寝室。

…なんで寝室?

電気をつけた、龍さん。

そして、あたしをベッドの上に座らせた。

「……なぁ、もう一回瞳…見せて?」

…普通。

普通だよ?

あたしの中での普通、総長は、人にあんまり

お願いするものではないと思う。

…うちの場合、親父は組長だけど。

「…別に。いい…ですよ?」

瞳…見るくらい。

……………嘘。

見られ慣れてない。

いつも、桜吹雪組の奴らは、あたしの瞳の色

を見るのを怖がっていた。

だから…見せて?なんて言われると…恥ずか

しい。

「……………ありがと」

恥ずかしそうに、お礼を言われる。

龍さんが、あたしの瞳を見つめて。

あたしは、瞳を逸らしたいんだけど、龍さん

に見つめられると…

逸らせない。

逸らしたくないのかもしれない。

だって、龍さん…カッコイイから。

…初めて会った時から、カッコイイと思って

た。

黒に赤のメッシュが入った髪を見ると、本当

に引き込まれる。

黒い瞳に迫力がある。

「……やっぱ、碧の瞳は綺麗だ。俺、碧の瞳

の色、すげぇ好き」

…あたしの瞳を好きだと言ってくれるのは、

龍さんだけなんだろうな。

みんな、この色に…

瞳の中のラメに…

あたしの後ろに、おじいちゃんとおばあちゃ

んを感じて、あたしを怖がる。

…まぁ、知らないんだもんね。

おじいちゃんたちの伝説を。

…あの、悲しい伝説を。

「…これ、銀さんの色とは違うよな」

「…はい。これは、祖父と祖母の遺伝なんで

す」

「……そうか。じゃあ、ふたりに感謝だな。

こんなに…綺麗なんだから」

「………はい」

ダメだ~。

泣けてくる。

「…なんで泣く?」

びっくりしたのか、顔を歪めた。

「……初めて言われた」

「…綺麗だって?」

「……はい…」

あたしは…龍さんを信頼してるのかも。

信頼…してるんだ。

「……寝てていいから。ゆっくり休め」

そう言って、寝室を出た龍さん。

龍さんのベッドなのかな?

龍さんの香水の匂いがする。

「…じゃあ、甘えさせてもらお」

あたしは、眠りについた。




「…碧。女の子の碧も、男の碧も、俺は好き

だよ」

…翔が、そう呟いてたらしい。