合格発表の日。

あたしの番号は、もちろんありました。

しかも、特待の中に。

私立の学費が、全額免除だって。

勉強して得することって、あったんだね。

これで…

あたしは、琉咲に入れる。

琉咲は…男子だけしかいない。

男子校だから。

…あたしは、この学校に女ひとりだな。

きっと、あたしみたいなことをしてる奴は、

ひとりもいない。

…女、ひとりね。

バレたら、どんなことになるんだろ。






「…制服、やっぱだるい」

ブレザーは着なれなくて、ズボンだと、足さ

ばきが悪くて、蹴りにくい。

…喧嘩しにくいの、まじ勘弁。

「お前、小さくね?」

「はぁ?」

いきなりなんだ、こいつ。

うっざ。

てか、学生にしては年じゃね?

まぁ、見た目年齢、25くらい?

「俺に向かって、そんなこと言うとはね」

「てか、あんた誰?制服着てねぇし、ホスト

みたいだし」

「…お前、俺を知らない?」

「知らない」

「俺は、この学校の理事長。で、お前の母さ

んの婚約者だったんだよ。で、お前の親父さ

んの、親友だ」

「…はぁ?」

「だから、お前が身長が他の奴より小さい理

由も知ってる。もちろん、お前が喧嘩が強い

ことも知ってるがな。さすが、銀のむす…こ

だな。俺は、銀に背中を預けてたから」

「…まじ?」

ってことは、めっちゃ強いってこと?

てか、親父に背中預けてたってことは、もっ

と年とってるってこと?

「銀とは、同い年だ。俺、若いだろ?」

「…うざ」


―ボコッ


腹に一発。

少し…てか、すごくムカついたから。

「いってぇな。さすがだけど。女顔…」

ヒット!!

二発目ですね♪

「…ってぇ。なんで殴んだよ」

「禁断の言葉を言ったから♪」

にこって笑った。

悪顔だけど。

「…普通に笑ってたら、ただ可愛いだけなん

だけどなぁ」

「黙れ♪おじさん」

もっと悪な笑いをした。

「はぁ…おじさんは、傷つくぞ」

「いいよ、おじさん。本当のことだから。て

か、名前は?」

「俊≪しゅん≫」

「俊兄ね」

「はぁ…お前は、無意識か?」

「なにが?」

「はぁ…早く、体育館行け。もうすぐ入学式

始まる」

「あぁ!!」

入学式のこと、忘れてた。

「てか、俊兄、ここにいていいのかよ!?」

「ダメだな」

「おいっ!!じゃあ、俺は行くから」

走らねぇと…

いくらなんでも、不良校だからって、入学式

に出ねぇと怒られるだろっ。

「やっべぇ!!」

とにかく、早く行かねぇと。

走っていく、後ろの道に、あたしの過去を捨

てて。

あたしは、男として行く。

…自分なんか、捨てて。