あたしにも…わかる気がした。

波が、引いたり、押し寄せてきたり、見てる

とすごく不思議な気持ちになる。

「波ってさ、引いたり、押し寄せてきたり、

恋と同じだと思うんだ。恋だって、いきなり

好きじゃなくなっちゃったり、すごく好きに

なったり、色々だろ?」

「うん」

本当に、そうだった。

あたしは、奏が大好きだったのに、奏にひど

いこと言って、突き放して。

でも、突き放しただけ、後悔と好きって波が

押し寄せてきた。

「でもさ、波って、結局海に戻るんだ。この

大きな海に、戻ってくるんだ。恋も、さんざ

ん悩んで、嫌いになって…結局、好きなんだ

よ。だから、波も恋も同じなんだ」

奏が、真っ直ぐ海を見つめて、そう語る。

…わかる。

わかるよ。

だって、あたしは今…海に戻ってきた。

だから、わかる。

あたしは、履いてたヒールのサンダルを脱い

で、海に走り出す。

「奏!!」

まだ、波を見つめている奏に、海の水をかけ

る。

「うわっ、冷たっ」

「あはっ♪奏、びしょびしょ!!」

「奏歌~!!お返しだっ」

また、あたしも水をかけられて、水のかけ合

いになった。

いつの間にか、ふたりはびしょ濡れで。

笑い合った。

そして、海の水でびしょびしょの奏に、抱き

締められた。

「俺、今までずっと…奏歌に迷惑かけちゃっ

た。迷惑かけて…もう、諦めなきゃいけない

って、何度も思った。それでも…諦めようと

思えば、思うほど…奏歌が好きになった。だ

から、傷つけちゃいけないって思って、距離

を置けば置くほど…辛かった。奏歌を、苦し

めてた。俺…すげぇバカだから、奏歌の幸せ

がなんなのか、わからなかった。奏歌が、尚

斗と付き合ってるのが、一番幸せだって、奏

歌に、俺を嫌いになってもらおうって、何度

も傷つけないって思ってたのに、傷つけてし

まった。奏歌に辛い顔させてる自分が、嫌い

で、憎かった」

「奏…」

そんなこと、思ってくれてたんだ。