「席がえするぞ~」

いきなり、担任の先生から声がかかって、席

がえが、開始する。

くじ引きだから、ちょっと怖い。

でも…やっと奏と離れられる。

「はぁ…」

できれば、尚斗クンの近くに…

最低でも、夏喜クンとか、マツとかヒロの近

くにっ…

「うっわ…」

あたしが引いたのは、廊下側から一列目の、

一番前の席だった。

「奏歌ちゃん、どうだった?」

「えっ…あのね、最悪だった」

「まじ…?俺、最高だったのに」

「まじ、最悪~。俺、くじ運悪ィ?」

「だな!!ドンマイ、奏」

…奏??

「いいでしょ~?奏クン。あたしと隣なんだ

から♪」

奏の近くで騒いでたのは、あたしが…

奏と別れた時、あたしにビンタしてきた女の

子だ。

…あたし、なに気にしてるんだろ?

もう、奏のことは、諦めたのに。

今は…あたしは、尚斗クンと付き合ってるん

だもん。

「一番前だけどぉ…奏クン、あたし、奏くん

が隣ならね、一番前でもいいんだぁ」

「あっそ」

…あの子、この前、あたしがバスケやってた

時に、奏と一緒にいた子だ。

よく…奏と一緒にいるのに、奏は、冷たくす

るんだ。

「理恵≪りえ≫、少し黙れ」

「え~、でもぉ…」

奏は、何か探してるみたいで。

…そういえば、奏も、あの理恵って子も、一

番前なんだよね。

隣になったら嫌だな…

「じゃあ、席移動しろ~」

「はぁ」

移動すると…

「もういやっ…」

泣きたくなってくる。

だって…

クラスが違くなるように、勉強も頑張って、

忘れるように頑張ったのに…

席もかえて、遠くなれると思ってたのに。

なんで、また…

隣になっちゃったんだろ…

「やだ~。理恵、あの女大っ嫌い~」

「だから、黙れっつってんだろ。イライラす

んだよ」

「奏クン、今日機嫌悪いぃ~」

「うっせぇ」

…やだぁ。

なんで…

あたしの隣には、奏。

あたしじゃない、奏の隣は、理恵。

「尚斗クン…」

「大丈夫だよ、奏歌ちゃん。今までみたいに

休み時間は、俺の席のところ来ればいいから

さ」

優しく抱き締めてくれる、尚斗クン。

まだ、授業中なのに…

しかも、教室なので、みんな見てるのに…

最近、尚斗クンは大胆だと思う。

「奏クンの次は、明屋クンなのぉ?結局、顔

重視?」

「チッ」

奏が、舌打ちをする。

…なんなのよ。

あたしだって、奏と隣になりたかったわけじ

ゃないんだけど。

「…奏歌」

……奏が、あたしの名前を呼んだ…?

「…よろしく」

よろしくって…言われた?

「……うん。よろしくね…」

…何がしたいのよ。

あたし、奏に関わらないようにしてるのに、

なんで…奏から、関わってくるの?