「ただいま~」

お母さん、出掛けてるみたい。

あたし…ひとりだ。

部屋に戻って、ベッドに寝転がる。

「寝ようかな~…」

最近、寝不足だし。

…目を閉じても。

出てくるのは、奏の笑顔で。

奏にフラれた時のことで。

今日なんて…あたしのことをバカにしてたこ

とまで、聞いちゃって。

「…嫌だな~」

学校、行きたくない。

奏を見たくない。

声も聞きたくない。

…奏の全ての記憶を、消してしまいたい。

大袈裟…なのかな。

でも…忘れたい。

忘れて…気持ちが消えるなら、忘れたい。

いっそ、記憶喪失になりたい。

…いいじゃない。

忘れようとしなくても。

自分が…なくなってしまえばいいんだ。

「…3時」

まだ、3時をちょっと過ぎた頃。

まだ…お兄ちゃんもお母さんも帰って来ない

よね。

か…机の引き出しに、あったと思う。

「…あった」

切れるよね…これ。

…少し怖い。

けど、もうこんなこと考えてられない。

いけっ…!

「…ったぁい…」

痛い、痛い、痛い…

あたし、まだ生きてるんだよ。

だって、痛いことがわかるんだもん。

ていうか…血、流れすぎ。

確かに、利き手の右手で切ったけど…

あたし、バカ力なのかな?

頭もバカなら、力もバカ…

なんか、むなしい…

あ~…痛くなくなってきたな…

あっ、眠れそうかも。

「…あたし、死ねる。さようなら…」

ごめんね、梨那、お兄ちゃん。

今まで、こんなに支えてくれたのに。

ありがと…

それと、奏。

あたしは…これほどに、奏が大好きです。