―コンコンッ


自室のドアをノックする音が聞こえて、反応

する。

「誰~?」

「俺」

「あ~、はいはい。ど~ぞ」

「奏歌」

あたしと同じ髪の色、目の色。

目の下にあるホクロも、ある。

「どうしたの?」

「奏歌が騒いでたから。こっちが、どうした

の?だからな」

「いいの!!女の子の話!!」

「あ~、例の彼氏の話か」

「例?彼氏!?」

「なんか、噂でな。お前の妹、彼氏できたら

しいって言われた。地味な奴だって」

「お兄ちゃんっ」

あたしに皮肉そうに話してくるのは、あたし

のお兄ちゃん。

名前は…陽≪あきら≫。

まぁ、滅多に名前なんて呼ばないけど。

「地味じゃないよ、奏は!!」

「へぇ。奏っつうんだ」

「もう!!いいでしょ!!」

「いや~。面白いから、まだ見てる」

「だめ~。やめて?」

「俺、ベッドの上で大人しく座ってるから。

今の続きどうぞ」

「やめてよ、お兄ちゃん」

「いいから。俺は空気だと思ってさ~」

「お兄ちゃんのバカ」

でも、暇はないから続きをする。

服を選んでる間、こっちの方がいいとか、な

んだかんだでアドバイスしてくれたから、許

してあげるけど。

「お兄ちゃん、あたし、もう寝るから」

「あっ、そう。じゃあ、おやすみ。俺、奏歌

が寝るまでここにいるから」

「………今日、お兄ちゃんどうしたの?」

おかしいよ。

いつも、そんなふうにあたしに構ったりしな

いのに。

「妹が恋しい季節?」

「彼女さんにまた勘違いされて、フラれちゃ

っても知らないよ?」

前、あたしとお兄ちゃんがカレカノに見えて

しまったお兄ちゃんの彼女さんが、あたしの

前で、思いっきりお兄ちゃんを殴った。

「あ~。今の彼女は別にいい。奏歌の方が可

愛いし」

「お世辞いらなぁい。おやすみ~」

ベッドに入ろうと、布団をめくると、お兄ち

ゃんがあたしに、布団をかけてくれた。

「…おやすみ」