今回は優しいキスを。

この前みたいに、強引にではなく。

まぁ、どっちも、俺が勝手にしてるけど。

もう一度キスをして、頭を撫でた。

すると、奈央の目から涙が流れてきた。

「…光輝クンのバカ」

「えっ…」

「…聞こえてたよ、言葉」

「…まじかよ」

「…もう一度、言って?」

聞こえてたのか…

「…愛してる。この言葉以上に」

自分から言えって言ったくせに、言葉を聞い

たとたんに涙が、もっと溢れ出てくる。

「…だからこそ、俺は奈央と付き合えない。

好きだからな…」

「……」

黙ったまま、なにも言わない。

「俺は、友達として…ずっと、お前が好きだ

から。俺はやっぱり、弱いから…最終的には

奈央を…傷つけてしまう」

ただ黙って聞いててくれるから。

俺は素直に、伝えることができる。

「…一生好きだから。けど、俺は奈央をあき

らめなきゃいけない。あきらめなきゃ、俺も

お前も壊れてしまう。わかってるから…」

だからさ…

「…幸せになってほしい。俺以外の奴と付き

合って、キスをして…結婚して。俺がお前を

あきらめられるように。お前がまた、自然に

笑えるように」

…だから、お前は幸せになってほしい。

「…光輝クン」

奈央が泣いたままの顔で、こっちを向く。

「……ずっと好きでした。光輝クンの声もだ

けど、性格も、仕草も…全部」

そう言って、抱きついてきた。

この、バスの座席の狭さが、俺たちの心を近

くしたのかもしれない。

「……幸せになれよ」

俺はずっと近くで見てるから。












…友達として



光輝side終