「一個目~、行くよ」

あたしは、着飾った格好で舞台に向かう。

監督、光輝クン、あたし、実穂さんで上がっ

ていく。

あたしが見るのは、光輝クンの背中。

横顔をみて、歩きたかった。

光輝クンの隣を、あたしの特等席にしたかっ

たな。

…フラッシュがすごい。

目が痛いかも。

しかも、シャッターを切る音が、それぞれ違

って、音に酔いそう。

こんな中、笑顔でいなきゃいけないんだ。

光輝クンが、作り笑顔をしている。

すぐわかるよ。

あたし、光輝クンが好きだったんだもん。

…けど、あたしの勝ちかな。

あたしの方が、作り笑いがうまくなった。

すごく自然な作り笑いができるように、練習

したんだもん。

…なんて、嬉しくないけど。

いろんな質問をされる。

最初は、映画についてだったけど、それから

プライベートなことになってきて、学校では

どんな感じかとか聞かれた。

「あたしは…普通の女の子ですよ~」

『好きなことはなんですか?』

「え~と、声優さんの声が好きです。あと、

放課後に友達とお茶することですっ」