相手がどこにいるかわかった上で、相手を見

ないように気を使ってるんだから。

それに、光輝クンは、仕事で忙しいみたいだ

し。

あたしも、やっと野次馬が減って、すごく嬉

しい。

「…おはようございます」

バスに乗り込む時、小さな声で挨拶。

…誰もいなかったけど。

…どこに座ろう。

後ろの方の席にしようかな…

一番後ろにしよう。

5人分が繋がった席だし、寝ようと思った時

に寝やすいから。

一番後ろの一番右、窓側の席に座る。

まだ車は出てないから、景色は変わらないけ

ど、窓の外の景色を見ているのは、なぜか、

すごく気持ちが落ち着いた。

安心できた。

ぼんやりと見ていると、誰かが歩いてきた気

がする。

…光輝クン。

「…はよざいます」

…おはようございますって、しっかり言って

ないじゃない。

光輝クンがふたり目…

どこに座るんだろう。

「青葉クン、どこに座ってもいいからね」

「……はい」

相変わらず、窪野さんを嫌ってる様子。

…ってことは、あたしも嫌われてるね。

きっと、すごく遠い席に座るはず。

…もうあたし、後ろは振り返らないことに決

めたんだよ。

「………」

なにも話さないで、どんどん後ろの方に歩い

てくる光輝クン。

「……」

あたしも黙る。

…あと席、後ろから2つしかないよ?

そのまま歩いてきて…

あたしが座ってる、一番後ろの一番左に座っ

た。

「えっ…」

小さな声で、あたしは驚きの声を出した。

…なんで、あたしの近くに座ったの?

「…はよ」

「あっ…おはようございます」

一応、光輝クンは同い年でも先輩。

まぁ…今日で終わりだけど。

最後の仕事。

きっと、今日のこれが光輝クンと関わる最後

かな…

「……………」

黙る、黙る、黙~る!!

会話な~いっ!!

話すこともないけど~…