―ガチャンッ


とっさに飲み物を選択した。

飲み物を取ってから、また後悔。

「やっぱり…オレンジジュースは嫌いになれ

ないよ…ね、光輝クン…」

買ったオレンジジュースを抱き締めて、みん

なのところに走る。

歩いても良かったんだけど…

走って、疲れたかった。

違うことを考えたかった。

「彩希、遅くなっ…」

言葉が止まった。







「なんで………?」

光輝クンがいるの…?

なんで…

坂下クンが光輝クンの胸ぐら掴んでるの?

「光輝、なんとか言えよ」

冷静な。

いつも通りの坂下クンの声。

けど違うのは、表情。

すごく怒ってるというか…

もう、怒りが満ちているって感じ。

…怖い。

「…だから、俺は知らねぇ」

光輝クン…

「だから、なんで夕暮に本当のこと言わねぇ

んだよって聞いてんだろーが」

あたしたちの他に、誰もいない屋上。

彩希は、いつも通りクールに腕を組んで、壁

に寄りかかっている。

「…知らねぇっつってんだろ」

「嘘つくんじゃねぇよ!!」

坂下クンが手をあげる。

……光輝クンが殴られるっ…

「待って!!坂下クンッ!!」

「…夕暮」

「奈央…」

夕暮…と呼んだのは、坂下クン。

じゃあ…

奈央と呼んだのは…?

「…光輝クン」

光輝クンの表情に、もちろん笑顔はない。

というより…

悲しそうな顔をしてる。

あたしと目を合わせようとしない。

「坂下クン…あたしはいいから。光輝クンを

離してあげて?」

「けどっ…」

「いいの。坂下クン」

近寄って、坂下クンの腕を掴む。

ふたりの高い身長を見上げる。

ふたりとも、決して良い表情をしてない。

ふたりは仲が良いのに…

そんな顔しないで?

「あたし…ふたりには仲良くしてほしいな…

ね?」

「あぁ」

あたしに掴まれた手を、光輝クンから離して

くれた、坂下クン。